災害時、自宅で快適に過ごすために 高齢者のための衛生対策と準備
もしもの大きな災害が起きた時、状況によってはご自宅で数日間、あるいはそれ以上の期間を過ごすことになるかもしれません。避難所へ移動することが体力的に難しい場合や、慣れたご自宅で過ごしたいと考える方もいらっしゃると思います。
ご自宅で避難生活を送る際に、とても大切になるのが「衛生」です。清潔な環境を保つことは、ご自身の健康を守り、気持ちよく過ごすために欠かせません。断水や停電が起きると、普段通りの生活ができなくなるため、衛生を保つための工夫や備えが必要になります。
この記事では、高齢の方が自宅で避難生活を送る際に役立つ、具体的な衛生対策と必要な準備について分かりやすくご説明します。
なぜ自宅避難中の衛生が大切なのでしょうか
災害時は、生活環境が大きく変わり、疲れやストレスも溜まりやすくなります。このような時だからこそ、清潔を保つことが、心身の健康維持に繋がります。
- 感染症の予防: 手洗いや身の回りの清潔を保つことで、食中毒や様々な感染症にかかるリスクを減らすことができます。特に、免疫力が低下しやすい高齢の方にとって、感染症予防は非常に重要です。
- 健康状態の維持: 体や口の中を清潔に保つことは、皮膚のトラブルや口腔内の病気を防ぎ、健康状態を良好に保つ助けになります。
- 心の安心と快適さ: 清潔な環境で過ごすことは、気持ちを落ち着かせ、安心感を得ることに繋がります。「汚れている」という感覚は、知らず知らずのうちに大きなストレスになります。
自宅避難中の衛生対策と準備リスト
それでは、具体的にどのような備えをしておけば良いかを見ていきましょう。
1. トイレの備え
断水した場合、自宅のトイレは使えなくなります。トイレが使えないことは、衛生面だけでなく、精神的な負担も大きくなります。
- 非常用トイレの準備:
- 凝固剤と汚物袋がセットになった非常用トイレを用意しましょう。既存の便器にかぶせて使えます。
- 大人1人あたり1日に5回程度トイレを使うとして、最低でも3日分、可能であれば7日分以上の備蓄をおすすめします。
- 消臭効果のあるものを選ぶと、気になる臭いを抑えることができます。
- 使い方と工夫:
- 使用後は必ず汚物袋の口をしっかり縛り、密閉できるゴミ箱に捨てます。
- ゴミ箱も蓋付きのものを用意し、定期的に清掃や消毒を心がけましょう。
- 可能であれば、トイレの場所に換気扇を回すか、窓を開けて換気を行います。
2. 手洗い・消毒の備え
断水している状況でも、食事の前やトイレの後など、こまめな手洗いや消毒は非常に大切です。
- 手洗いのための水:
- ペットボトルなどにきれいな水を常備しておきましょう。少量ずつですが、流しながら手洗いができます。
- 手を洗った後の排水を受けるための洗面器やバケツも用意しておくと便利です。
- 災害用の簡易的な手洗いキットなども市販されています。
- 手洗いできない時の対策:
- ウェットティッシュ: アルコール入りのウェットティッシュは、手や体を拭くのに役立ちます。大判で厚手のものがあると便利です。
- アルコール消毒液: 手指用のアルコール消毒液は、水が使えない場所でも手軽に使えるので重宝します。
- 石鹸: 固形石鹸や液体石鹸も忘れずに備蓄しておきましょう。
3. 体の清潔の備え
お風呂に入れない日が続くと、体のベタつきや臭いが気になり、不快に感じるかもしれません。
- 体を拭く:
- 清拭タオル: 体を拭くための専用タオルや、温めて使えるタイプのものがあります。体を部分的に拭くだけでも、さっぱりします。
- 濡れタオル: 水で濡らして絞ったタオルや、温めて使うこともできます。
- 髪の毛:
- ドライシャンプー: 水を使わずに髪の汚れや皮脂を落とすことができるスプレーやシートタイプのものです。
- 口腔ケア:
- 歯磨き: 歯ブラシと歯磨き粉は普段から使っているものを余分に備蓄しておきましょう。水が少ない場合は、少量の水で磨いたり、歯磨きシートやマウスウォッシュを活用するのも良いでしょう。
- マウスウォッシュ: 口の中をゆすぐだけで、ある程度の清潔感を保つことができます。
- その他:
- 制汗シートやボディシート: 体の気になる部分を拭くのに便利です。
- 着替え: 下着を含め、数日分の着替えがあると、気持ちよく過ごせます。汚れた衣類を保管する袋も用意しておきましょう。
4. 居住空間の清潔の備え
家の中の環境をきれいに保つことも、健康維持と快適な生活のために大切です。
- 清掃用品:
- ウェットティッシュ: 手や体を拭くものとは別に、家具や床を拭くためのウェットティッシュがあると便利です。
- 粘着ローラー: 髪の毛やほこりを取るのに役立ちます。
- 使い捨て手袋: ゴミの処理や掃除の際に使用すると衛生的です。
- ゴミの処理:
- ゴミ袋: 多めに用意しておきましょう。中身が見えにくい色付きの袋があると良いかもしれません。
- 消臭剤: 生ゴミなどの臭いを抑えるために役立ちます。
- 蓋付きのゴミ箱: 臭いが広がりにくく、虫も寄り付きにくくなります。
- 換気:
- 窓を開けて空気の入れ替えをすることで、湿気や臭いを減らし、感染症予防にも繋がります。ただし、災害の状況によっては換気が適さない場合もありますので、安全を確認しながら行いましょう。
大切なのは「できることから」始めること
一度に全てを完璧に備えるのは難しいと感じるかもしれません。大切なのは、無理なく「できることから」少しずつ準備を始めることです。
まずは、非常用トイレをいくつか用意することから始めたり、次にウェットティッシュやアルコール消毒液を防災リュックに追加したりと、焦らずに進めていきましょう。
ご自身の体調や体力に合わせて、どの程度の備えが必要か、どんな方法なら続けやすいかを考えてみてください。これらの備えがあれば、もしもの時も慌てずに、少しでも清潔で快適な自宅避難生活を送ることができるはずです。ご自身の健康と安心のために、ぜひできることから備えを進めてみてください。