家の中で安心に過ごすために 高齢者のための転倒予防と安全確認
ご自宅での転倒に備えるということ
私たちは日々の暮らしの中で、無意識のうちに家の中を移動しています。しかし、ちょっとした段差や滑りやすい床などが原因で、思わぬ転倒をしてしまうことがあります。特に、年齢を重ねると、体のバランスを保つのが難しくなったり、とっさに手が出にくくなったりするため、転倒のリスクが高まります。
家の中での転倒は、骨折などの大きな怪我につながることも少なくありません。怪我をしてしまうと、その後の生活に影響が出るだけでなく、ご家族に心配をかけてしまうことにもなります。
しかし、ご安心ください。家の中を少し見直して、いくつかの簡単な工夫をするだけで、転倒の危険をぐっと減らすことができます。これは、もしもの災害時など、あわてて家の中を移動する必要がある場面でも、ご自身の安全を守ることにつながります。
この記事では、ご自宅の中で特に転倒しやすい場所と、そこでできる具体的な転倒予防の工夫や安全確認の方法についてご紹介いたします。ご自身のペースで、できることから始めてみましょう。
家の中で特に注意したい場所と対策
ご自宅の中で、転倒しやすい場所はいくつかあります。それぞれの場所に合わせた対策をすることで、より安全に過ごすことができます。
1. 玄関
玄関は、靴を脱ぎ履きする際にバランスを崩しやすく、段差がある場合が多い場所です。
- 段差の解消または工夫: 可能であれば、上がり框(あがりかまち)の段差を緩やかにしたり、小さなスロープを設置したりすることを検討します。難しければ、段差の縁に明るい色のテープなどを貼って、段差があることを分かりやすくするだけでも効果があります。
- 手すりの設置: 玄関に手すりがあると、靴の脱ぎ履きや出入りする際に体を支えることができ安心です。
- 照明の明るさ: 玄関を十分明るくしておくと、足元や段差が見えやすくなります。夜間でも安全に使えるよう、センサーライトなども有効です。
- 物を置かない: 玄関に靴や傘立て以外の物を置かず、広くて歩きやすいスペースを確保します。
2. 廊下や通路
家の中の移動で使う廊下や通路も、滑ったりつまずいたりする危険があります。
- 床の滑り止め: 滑りやすいフローリングなどの床には、滑り止めの効果があるワックスを塗ったり、滑りにくい加工がされたマットやカーペットを敷いたりすることを検討します。
- 物の片付け: 廊下や通路に新聞や雑誌、電気コードなどを置かないようにします。常にすっきりさせて、安全な通り道を確保します。
- 手すりの設置: 長い廊下や、部屋から部屋への移動が多い場所に手すりがあると、移動中の安心感が増します。
3. 階段
階段の上り下りは、特にバランスを崩しやすい行動です。
- 手すりの設置: 階段には必ず手すりを設置しましょう。両側に手すりがあると、より安全です。
- 段差の工夫: 段差の縁に滑り止め材や明るい色のテープを貼ることで、踏み外しを防ぐ効果があります。
- 照明の明るさ: 階段全体を明るく照らす照明を設置します。足元を照らすライトも有効です。
- 階段に物を置かない: 階段に物を置くと、つまずきの原因になります。常に物を置かない習慣をつけましょう。
4. 浴室やトイレ
水を使う場所は、床が濡れて滑りやすいため、転倒のリスクが高い場所です。
- 滑り止めマット: 浴室の洗い場や浴槽内、トイレの床に滑り止めマットを敷きます。
- 手すりの設置: 浴槽の出入り口、洗い場、トイレの壁などに手すりを設置すると、体を支えやすくなります。
- 立ち座りの工夫: トイレには、立ち座りを助ける手すり付きの暖房便座などを検討することもできます。
5. 寝室
寝起きや夜間の移動で転倒することがあります。
- ベッドや布団周りの整理: ベッドサイドに物を置きすぎないようにします。
- 足元の照明: 夜間にトイレに行く際など、足元を照らせるよう、ベッドサイドにライトを置いたり、廊下に人感センサー付きのライトを設置したりします。
- 敷物の固定: ベッドやタンスのそばにあるラグやマットは、端がめくれないように固定します。
自宅の安全を確認するためのチェックリスト
ご自宅の安全を一度確認してみましょう。以下のリストを使って、気になる場所がないかチェックしてみてください。
- 玄関に段差解消や手すりはありますか。
- 廊下や通路に物を置かず、安全な通り道が確保されていますか。
- 階段に手すりはありますか。段差は見えやすいですか。
- 浴室やトイレの床は滑りにくくなっていますか。手すりはありますか。
- 寝室からトイレまでの通路は安全ですか。夜間の明かりはありますか。
- 床にめくれそうなマットやカーペットはありませんか。
- 電気コードなどが床を這っていませんか。
- 家の中の照明は十分明るいですか。
- 普段履いている室内履きは滑りにくく、かかとがありますか。
- 手の届きにくい高い場所に物を置いていませんか。
このチェックリストで気になる点が見つかったら、一つずつ対策を考えてみましょう。全てを一度に行う必要はありません。できることから少しずつ改善していくことが大切です。
健康管理も転倒予防につながります
体の調子を整えることも、転倒予防に繋がります。
- 軽い運動: 無理のない範囲で、足腰を強くするような軽い運動を日課にしてみましょう。
- 視力や聴力: 定期的に視力や聴力の検査を受け、必要に応じて眼鏡や補聴器を使用します。
- 薬の管理: 服用している薬の中には、めまいやふらつきの原因になるものもあります。気になる場合は、医師や薬剤師に相談してみましょう。
誰かに相談することも大切です
ご自身だけで対策を進めるのが難しいと感じる場合は、地域の専門家やサービスに相談することができます。
- 地域包括支援センター: お住まいの地域の地域包括支援センターでは、高齢者の様々な相談に乗ってくれます。転倒予防のためのアドバイスや、住宅改修に関する情報提供なども行っています。
- ケアマネージャー: 介護保険サービスを利用している場合は、ケアマネージャーに相談してみましょう。ご本人の状況に合わせた専門的なアドバイスを受けることができます。
まとめ
家の中での転倒は、簡単な工夫で防ぐことができる大切な備えです。この記事でご紹介した、玄関、廊下、階段、浴室、トイレ、寝室などの安全確認や対策、そして健康管理に気を配ることで、ご自宅で安心して過ごすことができます。
できることから少しずつ、ご自身のペースで取り組んでみてください。小さな備えが、毎日の暮らしの安心、そしてもしもの時にもご自身を守る力につながります。ご家族とも一緒に、ご自宅の安全について話し合ってみるのも良いでしょう。
ご自身の安全を守ることは、ご家族にとっても大きな安心に繋がります。これからも、ご自宅で心地よく、安全にお過ごしいただくための一助となれば幸いです。