もしもの時、あたたかく過ごすために 高齢者のための体温維持の備え
自然災害は、いつ、どこで起こるか予測が難しいものです。地震や台風、大雨などにより、停電が起きたり、自宅での生活が一時的に難しくなったりすることが考えられます。
特に冬場だけでなく、季節を問わず、もしもの時に体を冷やさないようにすることは、ご自身の健康を守る上でとても大切です。体温が下がると体調を崩しやすくなる場合があるためです。
ここでは、災害時など、電源が使えないような状況でも、高齢者の方がご自宅や避難所などで体温を維持するためにできる、いくつかの簡単な備えと工夫をご紹介いたします。無理のない範囲で、できることから始めてみましょう。
なぜ、もしもの時の体温維持が大切なのでしょうか
人は、外の環境が変わっても体の体温を一定に保つ仕組みを持っています。しかし、年齢を重ねると、この体温を調節する働きが少しずつ弱くなることがあります。
もしもの災害で、暖房器具が使えなくなったり、冷たい場所で過ごさなければならなくなったりすると、若い頃よりも体が冷えやすくなる可能性があります。体が冷えると、疲れやすくなったり、関節の痛みを感じやすくなったり、風邪をひきやすくなったりと、様々な体の不調につながることがあります。
ご自身の体調を守り、不安な状況でも少しでも楽に過ごすために、体温を維持する備えを知っておくことは非常に重要です。
ご自宅でできる体温を維持する工夫
もしもの時にご自宅で過ごす場合、以下のような工夫で体を冷やさないようにすることができます。
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衣類を上手に重ね着する
- 薄手の肌着の上に、セーターやフリースなど、空気を含む素材の服を重ねて着ると、体の熱を逃がしにくくなります。
- 重ね着は脱ぎ着しやすいので、体温に合わせて調節しやすいという利点もあります。
- 首、手首、足首は、太い血管が通っているため、ここを温めると体全体が温まりやすいと言われています。マフラーやストール、手袋、厚手の靴下などを活用しましょう。
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毛布や寝袋を活用する
- 普段お使いの毛布はもちろん、もしもの時のために寝袋を用意しておくと、より暖かく過ごすことができます。寝袋は、体がすっぽり収まるので、体温をしっかり閉じ込める効果があります。
- 寝る時は、敷布団の下に毛布を敷くなど、下からの冷気を防ぐ工夫も有効です。
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暖房器具以外の温め方
- 使い捨てカイロは、電気を使わずに体を温めることができる便利なアイテムです。貼るタイプと貼らないタイプがあります。もしもの時のために数個備蓄しておくと良いでしょう。低温やけどには十分ご注意ください。
- ペットボトルにお湯を入れた簡易湯たんぽも、体を温めるのに役立ちます。熱すぎない温度にし、タオルなどで包んで使いましょう。
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窓や床からの冷気を防ぐ
- 窓に厚手のカーテンをかけたり、プチプチ(緩衝材)を貼ったりすることで、外からの冷たい空気を室内に伝えにくくする効果が期待できます。
- 床からの冷気は、厚手のカーペットやマット、段ボールなどを敷くことで和らげることができます。
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温かい飲み物や食べ物で体を内側から温める
- 白湯や温かいお茶、スープなどは、体を内側から温める助けになります。
- もしもの時のために、温かいスープやおかゆがすぐに作れるような簡易食品を備蓄しておくことも考えてみましょう。
非常持ち出し袋に入れておきたい体温維持グッズ
もしも自宅から避難する場合、非常持ち出し袋に体温維持に役立つものを入れておきましょう。
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アルミシート(エマージェンシーシート)
- 薄くて軽いのに、広げると体から出る熱を逃がさず、体を温かく保つ効果があります。小さく折りたためるので、持ち出し袋に一つ入れておくと安心です。
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使い捨てカイロ
- 避難先などで体を温めるのに役立ちます。低温やけどに注意して使用しましょう。
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厚手の靴下、手袋
- 足先や手先が冷えると、体全体が冷たく感じられます。予備の厚手の靴下や手袋があると役立ちます。
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レインコートやポンチョ
- 雨や風を防ぐだけでなく、体から熱が奪われるのを防ぐ効果もあります。薄手のものでも、体温維持の助けになります。
避難所などで過ごす場合の注意点
避難所で過ごす場合も、ご自身の体温維持に気をつけることが大切です。
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プライベート空間を作る工夫
- 体育館など広い空間で大勢の人が過ごす場合、周りの冷気を感じやすくなります。段ボールやブルーシートなどで囲いを作り、ご自身のスペースを確保すると、少し冷気を防ぐことができます。
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重ね着やアルミシートを活用する
- 自宅での工夫と同様に、衣類を重ね着したり、寝る時にアルミシートを使ったりして体を温かく保ちましょう。
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共同生活での感染予防と体温維持
- 避難所では感染症予防も重要です。換気が大切ですが、換気によって冷たい空気が入ってくる場合は、厚着をするなどして対応しましょう。
まとめ
もしもの時にあわてず、ご自身の体調を守るためには、日頃からの備えが大切です。体温維持の備えは、特別なものばかりではありません。普段使い慣れている毛布や衣類を活用したり、身近なもので工夫したりすることでも十分に役立ちます。
ここでご紹介した内容を参考に、ご自身の状況に合わせてできることから備えを進めてみてください。ご家族や地域の方々と、もしもの時の過ごし方について話し合ってみるのも良いでしょう。事前の準備は、もしもの時の安心につながります。