もしもの時、薬や持病の情報を伝えるための備え方
もしもの時、ご自身で体調や飲んでいるお薬のことを、言葉で正確に伝えられない状況になったら、どうすれば良いか不安を感じることがあるかもしれません。特に、持病があったり、毎日お薬を飲んでいたりする方は、いざという時にご自身の体の状態を周りの人に分かってもらえるか、心配になることもあるでしょう。
でも、ご安心ください。少しの準備をしておくだけで、そんな時でも大切な情報が、助けてくれる方にスムーズに伝わるようにすることができます。これは、ご自身を助けるためだけでなく、救急隊員の方や医師の方、そして大切なご家族が、迅速で適切な対応をしてくださるためにも、とても役立ちます。
ここでは、もしもの時、ご自身の薬や持病の情報を伝えるために、どのような情報をまとめ、どのように備えておけば良いのかを分かりやすくご説明します。
なぜ薬や持病の情報をまとめておくことが大切なのでしょうか
地震や台風といった自然災害が起きた時、あるいはご自宅で急に体調が悪くなった時など、予期せぬ事態はいつ起こるかわかりません。もし、ご自身で詳しく説明できない状況になってしまった場合でも、あらかじめ情報がまとめてあれば、次のような助けになります。
- 救急隊員や医師が、適切な処置を素早く判断できます。
- かかりつけの病院やご家族への連絡がスムーズになります。
- 持病に合わせた避難所での生活や、災害時の特別な配慮をお願いしやすくなります。
日頃から備えておくことで、ご自身もご家族も、そして助けてくれる方も、皆が安心して行動できるようになるのです。
どのような情報をまとめておけば良いでしょうか
緊急時に役立つご自身の健康情報として、ぜひまとめておいていただきたい項目をいくつかご紹介します。すべてを一度に準備する必要はありません。まずは、ご自身にとって特に大切だと思うものから始めてみましょう。
- 現在飲んでいるお薬について
- お薬の名前(可能であれば、医療機関でもらった「薬の説明書」や「お薬手帳」の情報が役立ちます)
- 飲む量と回数
- 何のために飲んでいるお薬か(例:血圧を下げる薬、痛み止めなど)
- 新しく飲み始めたお薬や、一時的に飲んでいるお薬も忘れずに
- 持病について
- 病気の名前(例:高血圧、糖尿病、心臓病など)
- いつ頃からその病気になったか(覚えている範囲で構いません)
- 現在の体の状態や、特に気をつけるべきこと
- アレルギーについて
- お薬でアレルギーを起こしたことがあるか
- 食べ物や、その他(例:消毒薬など)でアレルギーを起こしたことがあるか
- どのような症状が出たか
- かかりつけの病院や薬局について
- 病院や薬局の名前
- 電話番号
- 可能であれば、診察券のコピーなども役立ちます
- その他
- これまでに大きな病気や手術をしたことがあるか
- 血液型(ご存じであれば)
- ペースメーカーなど、体内に医療機器が入っているか
- 認知症やその他、診断されている体の状態について
- 緊急時に連絡してほしいご家族などの名前、電話番号、続柄
これらの情報は、普段お使いのお薬手帳にも記載されていることが多いですが、緊急時に必要な情報だけを分かりやすく一つにまとめておくと、より見つけやすく、伝わりやすくなります。
情報をまとめる工夫:分かりやすい「健康情報カード」を作りましょう
これらの情報をまとめるには、特別なものを用意する必要はありません。身近にあるもので、ご自身が一番使いやすい方法を選びましょう。
おすすめは、手書きのノートやカードです。
- 市販のノートや大きめのカードを使う: 情報を書くためのノートや、厚手の紙(はがきサイズなど)を用意します。
- 大きく、はっきりと書く: 文字は大きめに、誰が見ても分かりやすいように、丁寧な字で書きましょう。色のペンを使ったり、線を引いたりして、項目ごとに整理すると、さらに見やすくなります。
- 箇条書きでシンプルに: 難しい文章ではなく、項目ごとに箇条書きで必要な情報だけを簡潔に書きます。
- 写真は貼っても良い: 普段飲んでいるお薬のパッケージの写真や、かかりつけ医の診察券の写真を一緒に貼っておくことも、情報伝達の助けになります。
【健康情報カードの例】
(太枠で囲むイメージ) もしもの時の私の健康情報
- 名前:〇〇 〇〇
- 生年月日:〇〇年〇〇月〇〇日
- 血液型:〇型(不明の場合は書かなくても良いです)
現在服用しているお薬 - (お薬の名前)… 1日〇回、〇錠 (〇〇のために飲んでいます) - (お薬の名前)… 1日〇回、〇錠 (〇〇のために飲んでいます) (以下、現在飲んでいるお薬をすべて記入) ※お薬の説明書のコピーを一緒に保管しています
持病 - (病名)… いつ頃から (現在の体の状態など) - (病名)… いつ頃から (現在の体の状態など) (以下、すべての持病を記入)
アレルギー - お薬で… (例:〇〇という薬で湿疹が出た) - 食べ物で… (例:そばで息苦しくなる) - その他… (例:消毒薬でかぶれる)
かかりつけの病院・薬局 - 病院名:〇〇病院 / 電話:〇〇 - 薬局名:〇〇薬局 / 電話:〇〇
緊急連絡先 - 名前:〇〇 〇〇 (続柄:〇〇) / 電話:〇〇
(線の終わり)
このように、シンプルに必要な情報だけをまとめたカードを作成します。ご自身のお薬手帳を参考にしながら作成すると良いでしょう。
まとめた情報はどこに置くべきでしょうか
せっかく情報をまとめても、いざという時に誰にも見つけてもらえなければ意味がありません。緊急時に助けてくれる方が見つけやすい場所に置いておくことが大切です。
- 冷蔵庫のドアに貼る: 冷蔵庫は家の中で比較的目につきやすく、救急隊員の方が確認しやすい場所の一つです。マグネットなどで、すぐに見えるように貼り付けておきましょう。
- 玄関やリビングの分かりやすい場所: 玄関近くの棚の上や、リビングのテーブルの上など、普段からよく使う場所や、外から来た人が最初に入る場所に置いておくのも良い方法です。
- 非常持ち出し袋に入れる: 避難する可能性も考えて、非常持ち出し袋の中にコピーを入れておきましょう。
【大切なポイント】
- 保管場所を家族や近所の人に伝えておく: 離れて暮らす家族や、もしもの時に助け合いをお願いしている近所の方に、「私の健康情報は、冷蔵庫に貼ってあります」などと伝えておくと、さらに安心です。
- 個人情報の管理に注意する: 玄関などに置く場合は、情報が見えすぎないように、封筒に入れたり、ファイルに挟んだりするなどの工夫も必要です。
情報を定期的に見直しましょう
お薬が変わったり、体調に変化があったりすることがあります。まとめた情報も、常に最新の状態にしておくことが大切です。
- 新しいお薬が出されたとき
- 飲んでいるお薬の量が変わったとき
- かかりつけの病院が変わったとき
- ご自身の体調に変化があったとき
このような時には、健康情報カードの内容を見直して、書き換えたり、新しい情報を追加したりしましょう。年に一度、お薬手帳の更新時期などに合わせて見直す習慣をつけると、忘れにくいかもしれません。
まとめ:無理のない範囲で、安心の備えを始めましょう
もしもの時、ご自身の薬や持病の情報を正確に伝える備えは、ご自身の安心だけでなく、助けてくれる方々の迅速な対応にも繋がる大切な一歩です。
すべてを完璧に準備しようと気負う必要はありません。まずは、今飲んでいるお薬の名前を書き出してみることから始めても良いでしょう。手書きのカードは、いつでも書き直したり、付け足したりできる良さがあります。
この備えをすることで、「もしもの時も、これで安心だわ」と、少しでも心が軽くなっていただけたら幸いです。できることから、一つずつ、ご自身のペースで進めてみてください。